一生懸命新聞を読み、週刊誌の経済面を読み、人の意見に注意していたが、まさかすべての物が5分の1から10分の1になるとは想像もできなかった。90年までの右肩上がりが当然だった頃は思った。ー私の商売の仕方だったら、昔親父が言っていた漬物屋と一緒で、その時売れなくとも腐るものでないので、じっと持っていれば持っていた分高く売れると。しょうがない。下がり始めて、売るチャンスを逃してしまったものに関しては2・3年持っていよう、いずれ上がるだろう、と。
2・3年経って多くの物の値段が半値になった時、私はチャンスだと思い、買いに入った。ーそんなに長い間下がり続ける筈がない、と。私はたぶん我慢することに疲れていたのだろう、昔の世界一周を夢みていたり、大学の卒業証書を取ることに我慢出来たのに、50歳の、その頃よりも余程力を付けている筈の私が待てなかった。あるいはチャレンジしないと生きている気がしない性格がそうさせたのだろう。以来今度こそは底に違いないとトライし、その度事に上手く行かなかった。
坊主とか教育者を目指していた私のこの変化は、自分でも面白かった。自分はずっと同じなのにまるで違う人のようだった。それでも私の根底にある人間に対する興味、特に自分自身に対する興味は変わらなかった。昔から私は自分に云っていた、「あなたは何が欲しいの?」とか「何が知りたいの?」と。そしてそれが手に入る前から、それを知る前から、次の質問が待っていた。「その次は!!!?」と。
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