その当時五、六百万したその作品を私は平気で人に委託したが、結果として作品も金も戻って来ないことがあった。そのような事は想像もしていなかったので暫くは何が起こったのか解らず、ただ支払いが遅れていると言っていた。フジアートで私を指導してくれた上司が助けてくれ、なんとか解決したがその支払いのために2、3年は大変だった。
私は作品を失ったがそこには誰一人として悪い人はいなかった。最後に私がその作品を委託した人の家に行って話しをした時、作品はそこに有り、お金がなかなか入らないから戻したい、この絵を持って帰ってくれと言われたが、私はもうフジアートに売れたからと言ってしまったので今更キャンセル出来ない、どうしても金にしてくれと云って帰ってしまった。その後彼はわざわざ名古屋から私の3階の小さな画廊を訪れに来た。その人は私より20歳位年上の人だったが、謝ってから山林の権利書を置いて帰っていった。作品も金も失ってしまった彼は、その後病気で倒れ、死んでしまった。権利書はまだ持っているがそこに行った事もない。 |