− ギャラリーかわまつ誕生秘話 −


28.汽車内三十三時間

 

  3月18日、マドラス着。いろいろなおみやげ品をここから日本に郵送する事にした。まず呉服屋で白い布を買い、次に仕立て屋に行って送る物を全てその白い布でパックしなければならなかった。最初の小さな郵便局では書類が無かったりで要領を得ず、結局中央郵便局まで行って出したが、小包一つ郵送するのに2時間もかかってしまった。

3月21日、市内を歩き回る。テンプルタンクには汚いプールがあった。水は緑色で藻が浮いていたが、その中で身体を洗い、口を漱いでいる人がいた。周りの二十段位の階段には至る所にうんこが乾いて転がっており、そのすぐ近くでは女の人が洗濯をしていた。寺にはヒンズー特有の彫刻が柱に浮き彫りにされていた。

 
 マドライへのバス

3月22日、ベンガル湾に沿って北上し海岸の町プリに向かう。夜8時半の汽車なので、マドラスの日本領事館を訪ね新聞を読んだりしながら十分休養する。途中の乗り換えで午前零時から3時間、クルダロードという駅で待たねばならなかった。二等客用の待合室は汚く何か変な匂いがしたので、駅長と交渉して二階の一等待合室の外にある長椅子で寝かせて貰うことにした。ずっと汽車に乗っていたので脚がジンジンして眠れず、長い3時間を過ごす。33時間ぶりに汽車から下りた。

朝の5時半にプリに着いたのだ。政府が経営しているツーリストバンガローが開いていたので何とかそこにもぐりこむ。少し眠った後海岸を歩いてヒンズー寺を見に行く。案内所の話では仏教徒は寺に入れるとの事だったが、いざ門番と話してみるとやはりノーで、結局寺の周りのバザールを見るだけだったが、とかげの皮や蛇の皮など変な物を売っていたので面白くてつい買ってしまった。このヒンズー寺の周りにはブル―インド牛―が沢山いて、まさにインドの景色だった。

 

ぺリア―レイクのそばで象牙を持ち、御満悦

 

3月25日、所持金チェック。329ドルしか残っていなかった。計算してみると3月1日から25日まで全てを含め、二人で一日7ドルでやってきた事になる。朝、寝過ごして朝食をミスしてしまった。昼食は12時半からなので、一昨日買ったパンとコークを持って海岸に行き朝食とする。砂の上で海を見ながら食べる。

からすが5、6羽寄ってきたので余ったパンをあげる。海岸にはアメリカ人が二人日光浴したり,時々泳ぎに行ったりして時を過ごしていた。やっと12時半になったので食堂に行き、海老フライとパンとお茶の昼食を取る。耳の穴から毛の生えているお爺さんのボーイにチップを置く。私もアメリカ人のように泳いでみようと海水パンツでまた海岸に行き、海に入ってみるが風が有り白波ばかりでゆったり泳げず早々にして帰る。