今度はセイロンに渡るフェリーが出るラメシャラムという町へ向かう。セイロンに向かうフェリーは週二回しかないので、その町に二泊することにしたが、いざフェリーの切符を買う段になって、マドライで調べたときにはビザは必要なしと言われたのに、今になってやはり必要だと言う。しゃあない、すっぱりあきらめて次の日マドラスに向かうことにする。ついに北上の途に着く。これからは毎日旅する毎に日本に近づくことになる。
インドでは荷物はクーリーに持たせるのが普通で、外国からの旅行者の少ないこの辺では、大きな荷物をもって歩いている私達を不思議な常識のない人という目で見るので、我々もその目に対抗するのに疲れてしまった。その土地の習慣に逆らうのは結構エネルギーのいるものだ。インドではヨーロッパの国々と違い、美術館巡りよりもお寺巡りが多かった。美術館はほとんど無く、美術品があるのはほぼヒンズーの寺が主で、時には遺跡に近い仏教の寺だった。このインド半島最南に近いこの町のヒンズーテンプルは予想以上に大きく立派だった。寺の中にバザールもあり、まさに宗教と生活が渾然一体となっていた。
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