3月4日、ボンベイから汽車でさらに南のマイソールに向かう。何かを見に行くという訳ではなく、唯インドの南端の町に行ってみたかったのだ。途中ゴアに寄るつもりだったが、乗り換えに失敗しあきらめてそのままマイソールに向かった。この辺の汽車のスケジュールは乗り換えの待ち時間が10時間から時には一日待たねばならなかった。いくら時間だけはあるという我々にとっても一日の食費とホテル代は無視出来ず、たとえそれが3ドルでも。3、4時間待って夜中3時の汽車に乗った。三等寝台のベッドは木製で足の長くない私でも足がはみ出してしまうという物だったが、横になれるだけでも有り難かった。窓から見る景色は次第に熱帯地方のそれとなり、
大きな樹が堂々と四方に枝を伸ばし大地にしっかりと根を這わしている姿は実に美しいものであった。小さな樹には猿が動き回っており、動物園で見るのとは違い、いかにも南の方に来た感じがし、これからはもっと面白い所に行くのだなと思った。
三等寝台にいる人達は二等寝台にいる人達よりもより開放的で、確かに現地の人達と話している感じがした。2日2晩、約40時間汽車に揺られて待望のマイソールに着いた。
ホテルを見つけた後アフガニスタンからの留学生に遭い、彼らと同じ寮に日本からの留学生が一人いるというので会った。新井さんという農林省の食糧庁から派遣された人で、
水産大山岳部の先輩でやはり食糧庁に勤めている西丸震也さんを知っていたし、
彼の弟がやはり水大出だったり、もうひとりの弟が鎌倉学園出身の先輩だったりして、何かこんなインドの山奥で知り合うなんて不思議な感じがした。新井さんに次の日、今もマハラジャが住んでいるパレスに案内してもらったり、夕食をご馳走になったりして楽しい時間を過ごした。
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