最初の目的地ロサンジェルスに着くまで三週間あったので、船には縄跳び用のロープを持ちこんでいた。何時ものようなトレーニングをする事と同時にもし海が荒れたら、波に揺られる前に自分から縄跳びをして身体を動かしたら、たぶん船酔いから逃れられるだろうと。これは成功した。揺れている間ずっと縄跳びをしていた訳ではないが、むしろ疲れて酔う暇がなかったのだろう。
まったくおめでたい話で日本での貧乏旅行の経験を生かせば二年くらいで、金が無くとも世界一周できるかなと思っていた。ロサンジェルスで英語を勉強しながら働いて、次は南米の方に行こうか等と、のんきな坊ちゃんだった。
さくら丸の中にも南米に向かう人達が沢山いたようだった。その人達は現実を知っているので私のようの気楽な人とは話が合わなかった。
船中での食事はふたつに別れていて、一等と二等の客は大きなレストランのような食堂できちんとした服装で正式に食べていたが、三等の人達はどこか他の所で食事していたようだった。私はスポンサーである叔母の薦めに従い二等船室に居たので、おかげで食事のマナーを学ぶ事が出来たし、テーブルで色々な人たちと一緒になり楽しい船旅だった。もしこれが少しばかりの船賃を倹約して、叔母の薦めを無視して三等船室の切符をとっていたら随分と違う船旅になっていたことだっただろう。
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